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2012年3月

食品中放射能の新しい基準値

政府は、といっても厚生労働省ですが、食品中放射能について、これまでの暫定規制値を改め、新たな基準値を決め、この201241日から適用します。国が定める基準値というものは、すべてに適用する汎用性の高いものでなくてはならないはずですが、今回の新基準は放射性セシウムが中心で、半減期の短い放射性ヨウ素などは除外されています。当面はこれで良いのかもしれませんが、新たな事故が発生した場合には問題があります。

これまでの暫定規制値については私の以下のブログを参考にしてください。

http://hikaru0312.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-03d2.html

新たな基準値の詳細は以下の厚生労働省HPにわかりやすく記載されています。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120117-1-03-01.pdf

新たな基準値の概要は以下の通りです。

・放射性セシウムについて、これまで年間5ミリシーベルトを許容線量としていたが、新基準では、許容線量を年間1ミリシーベルトとする。

・飲料水、乳児用食品、牛乳、一般食品の4カテゴリーとする。

・新基準値は、飲料水で10ベクレル/kg、乳児用食品で50ベクレル/kg、牛乳で50ベクレル/kg、一般食品で100ベクレル/kgである。

・放射性ストロンチウム、プルトニウム、放射性ルテニウムを含めて基準値を設定し、合計して1ミリシーベルトを超えないようにしている。

・年齢区分別の摂取量と線量換算係数を考慮して限度値を算出し、そのうちの最も厳しい値から基準値を決定しているので、どの年齢の方にとっても適用される基準値である。

・乳児用食品とは、乳児の飲用に供することを目的として販売するものである。粉ミルク、ベビーフード、おやつ、乳児向け飲料など。

・牛乳の区分には、チーズや発酵乳、乳酸菌飲料は含まれない。

・製造食品、加工食品については、原材料だけでなく製造・加工された状態でも一般食品の基準値を満たすことを原則とする。

・乾燥食品については、乾燥状態及び食べる状態(水戻しした状態)それぞれで一般食品の基準値を適用する。

・お茶などは、原材料の状態では基準値の適用対象とはせず、飲む状態で飲料水の基準値を適用する。

・米ぬかや菜種などを原料とする油は、油として一般食品の基準値を適用する。

新たな基準値の適用に際しては、市場に混乱が起きないよう、米、牛肉、大豆については一定の範囲内で経過措置期間を設定する、とのことです。

新たな基準値であれば、当面は食品摂取による内部被ばくは、かなり抑えられると考えられます。ただし今後とも、魚を含めた海産生物の汚染、汚染地での山菜やきのこや淡水生物の汚染などには要注意でしょう。

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再生可能エネルギーの規制が大幅に緩和

我が国ではこれまで太陽光や風力、地熱発電などの再生可能エネルギーの普及が、種々の規制に阻まれて、進展できなかった。こうした規制は原子力強力推進と表裏一体であった。政府は330日に規制緩和するための103項目を閣議決定する。内訳は再生可能エネルギー39項目、電力システム改革38項目、省エネルギー26項目で、スピードを重視し、大半は運用の変更や政令の改正で対応できる(日本経済新聞2012324日朝刊)

主な規制・制度改革項目は以下の通り。

太陽光発電:売電施設を工場立地法での適用除外にする。

    敷地の25%を緑地や環境施設にするなどの義務が不要となり、屋上発電が容易になる

小水力発電:河川法の区分を大規模ダム発電とは区別する。

    国土交通省の許認可や煩雑な書類提出が不要になる。

風力発電:風車の審査基準を、建築基本法から電気事業法に変更。

    高層ビル並みの構造審査が不要になる。

地熱発電:自然公園法を見直す。これにより、地熱の有望地域が多い国立・国

定公園での垂直掘りが可能となる。

総体として:電力会社が持つ送電網の情報開示を促進する。このことにより、

事業計画時に接続可能地点や費用・工期などの把握が可能となる。

    

これまで再生可能エネルギー事業は、許認可手続きが煩雑で、見通しが立てにくくリスクが大きかったが、今回の規制緩和により、一気に事業が拡大するものと思われます。

例えば、これまでは太陽光発電施設は工場とみなされ種々の制限があり、賃貸料が安い土地でないと採算が取れなっかったが、規制改革により、工場の屋根にも設置できるようになり、地価の高い大都市でも工場地帯でも発電できるようになるようです。

風力発電ではこれまで設置のための環境影響評価に3年以上が必要でしたが、今後はその手続きを早めるようです。具体的には環境影響評価の項目を絞り込み、標準処理期間を1カ月以内に短縮するなど手続きを簡素化、自然公園内に風力発電設備を設置する際の煩雑なガイドラインを整理、簡素化する、とのことです。国土面積の3割を占める保安林を風力発電の敷地に転用することも可能となるようです。

小水力発電は、これまでは許認可手続きは大水力発電並みであったようですが、これを改め、農業用水を使った出力110キロワット程度の小規模発電も可能となるようです。農業用水などすでに水利権を持つ水路で水車を設置するなどの発電については登録制とする、とのことです。

地熱発電では、自然公園法を見直し、国立・国定公園内で地熱エネルギーを取り出すための垂直掘りを条件付きで認める、とのことです。

バイオマス発電では、木くずなどの発電燃料の価格が輸送費を下回る場合も無価値の廃棄物としては扱わないこととする。廃棄物処理法の規制や事業者の認定を受ける必要がなくなります。

電力システムについては、これまで大手電力会社が独占していた送配電網を再生可能エネルギー業者が利用しやすくするため、接続可能な地点や工期などの情報開示を促すそうです。これまでは電力会社に申請しなければ、事業計画に必要な接続距離や費用がわからず、回答にも長い時間がかかっていたようです。9電力会社の申請書類や運用ルールも統一させるとのこと。

 また省エネについては、自動車など天然ガスの利用拡大に向け、安全規格などを見直す。2020年までにすべての新築建築物・住宅で省エネ基準適合を義務付けるための制度を整備する、とのこと。

日本にもやっと再生可能エネルギーの春がやってくるようです。

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福島原発事故 放射性セシウムの生体影響

ベラルーシのゴメリ医科大学の学長であったユーリ・I・バンダジェフフキー氏のレポート「放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響-チェルノブイリ原発事故被ばくの病理データ」久保田護 訳、合同出版201112月刊(1800円)が波紋を拡げています。本レポートはチェルノブイリ原発事故により汚染した地域住民の健康状態に関して、ゴメリ医科大学が10年にわたって実施した剖検を含む医学的調査及び動物実験の結果を評価し、人体の各器官に起こる病理学的変化を考察したものです。病変は全身の臓器に認められています。

このレポートの結論は以下の通りです(上記の本には英語の原文も掲載されています)。

・放射能の病理学的影響は多種多様であり、その影響はこれまで考えられていたよりもずっと大きいだろう。人の生涯あるいは数世代に影響を及ぼすだろう。

・放射性セシウムは最も環境に拡散した放射能の一つで、生体の各臓器に取り込まれ、少量であっても危険であり、臓器の障害や、他の疾患との合併症を引き起こす。

・線量が少なくても、放射性セシウムの臓器への親和性は考慮されるべきである。放射性セシウムはまず心筋に取り込まれ、重大な代謝変化を引き起こす。

・公式の医学は完全にこうした事実を無視している。このことが対処措置が有効な結果を生み出さない理由である。若い人々の死亡は、統計的な報告に数字によってしか表されていない。

・放射性セシウムと他の放射性核種との併合からもたらされる病的変化は、生命組織全体で考えられるべきである。そのことにより最も傷つきやすい臓器や組織が明らかとなり、正しい診断、治療、予防措置が取られる。

本文からいくつかの記述を抽出します。

・子供から大人までベラルーシ国ゴメリ市で死亡した患者を剖検し、各臓器のセシウム137蓄積量を測定した。その結果、各臓器のセシウム137蓄積は一様ではないことが明らかとなった(図7)。濃度の高い順に、腎臓、心筋、骨格筋、脾臓(以下略)。

・どんな量の放射性セシウムでも発病の原因になり得る。

・私たちの考えでは、まず考慮すべきは重要な臓器に対するセシウム137の毒性であって、長半減期の放射性核種の崩壊により引き起こされる害ではない。

・放射性セシウムの濃度は、妊娠中の母体でかなり高くなるが、胎盤が生理的な防御壁になって、放射性セシウムが胎児へ移行することを防ぐ。生まれたての子供の放射性核種濃度はごくわずかであるが、母乳を与えることで、放射性セシウムが子供の体内に取り込まれしだいに蓄積していく。

・神経系の先天性奇形(無脳症、脳瘤)を持つ胎児で放射性核種の分析をしたところ、他の胎児と比べてセシウム137の胎盤濃度が際立って高かった。

・体内セシウム濃度との相関は、白内障羅患率、心電図異常、代謝不調、などに見られる。

以下は私なりの考察です。

セシウムは科学的にはナトリウムやカリウムと同族元素で、同じような挙動をします。放射性カリウムは人間の体内に64ベクレル/kgほど存在しています。64ベクレル/kgの放射性カリウムというのは体重60kgの人では3840ベクレルの放射性カリウムです。放射性カリウム1ベクレルは1秒間に1本のベータ線と1本のガンマ線を放出します。我々の体内で毎秒約4000本もの放射性カリウム起因のベータ線やガンマ線が発生し飛び交っており(もっと正確には体内には放射性炭素も44ベクレル/kgほどもあるので、体重60kgの人には放射性炭素も2640ベクレルほどあります)、それでも癌にもならず生きながらえることができるのは生命の奇跡とさえ思えます(しかし実際にはこうした天然の放射能が原因で癌になっている人もいると思います、そのように考えるのが合理的です)。

放射性セシウムからの放射線も放射性カリウムからの放射線も生体の細胞側から見れば区別がつかないはずです。さらには放射性セシウムが多少体内に入っても、内部被ばく線量としては、それほどのものではないはずです。ただヒ素やカドミニウムや鉛といった重金属が生体に悪影響を及ぼすように、セシウムという金属が生体に悪影響を及ぼすのなら、話はわかりますが、極微量のセシウムが悪影響を及ぼすのか、そのあたりは私にはわかりません。人間の体内には数ミリグラムのセシウムが常時存在しています。数~数十ベクレルの放射性セシウムの重量はナノグラム(10のマイナス9乗)のオーダーなので、生化学的毒性の観点からはたいしたことはないのでは、とも思います。

ただ上記のバンダジェフフキー氏のレポートによれば、線量が少なくても、放射性セシウムの臓器への親和性は考慮されるべきで、放射性セシウムはまず心筋に取り込まれ、重大な代謝変化を引き起こす、とのことです。

また妊婦の胎盤に放射性セシウムが蓄積されるなら、胎児は胎児を保護するはずの胎盤から放射性セシウムの放射線を常時浴び続けることになります。

このようなレポートがある以上、真実が明らかになるまでは、我々は放射性セシウムの体内取り込みにかなり気を付けなければならないのでしょう。

 

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