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福島原発事故 放射性セシウムの生体影響

ベラルーシのゴメリ医科大学の学長であったユーリ・I・バンダジェフフキー氏のレポート「放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響-チェルノブイリ原発事故被ばくの病理データ」久保田護 訳、合同出版201112月刊(1800円)が波紋を拡げています。本レポートはチェルノブイリ原発事故により汚染した地域住民の健康状態に関して、ゴメリ医科大学が10年にわたって実施した剖検を含む医学的調査及び動物実験の結果を評価し、人体の各器官に起こる病理学的変化を考察したものです。病変は全身の臓器に認められています。

このレポートの結論は以下の通りです(上記の本には英語の原文も掲載されています)。

・放射能の病理学的影響は多種多様であり、その影響はこれまで考えられていたよりもずっと大きいだろう。人の生涯あるいは数世代に影響を及ぼすだろう。

・放射性セシウムは最も環境に拡散した放射能の一つで、生体の各臓器に取り込まれ、少量であっても危険であり、臓器の障害や、他の疾患との合併症を引き起こす。

・線量が少なくても、放射性セシウムの臓器への親和性は考慮されるべきである。放射性セシウムはまず心筋に取り込まれ、重大な代謝変化を引き起こす。

・公式の医学は完全にこうした事実を無視している。このことが対処措置が有効な結果を生み出さない理由である。若い人々の死亡は、統計的な報告に数字によってしか表されていない。

・放射性セシウムと他の放射性核種との併合からもたらされる病的変化は、生命組織全体で考えられるべきである。そのことにより最も傷つきやすい臓器や組織が明らかとなり、正しい診断、治療、予防措置が取られる。

本文からいくつかの記述を抽出します。

・子供から大人までベラルーシ国ゴメリ市で死亡した患者を剖検し、各臓器のセシウム137蓄積量を測定した。その結果、各臓器のセシウム137蓄積は一様ではないことが明らかとなった(図7)。濃度の高い順に、腎臓、心筋、骨格筋、脾臓(以下略)。

・どんな量の放射性セシウムでも発病の原因になり得る。

・私たちの考えでは、まず考慮すべきは重要な臓器に対するセシウム137の毒性であって、長半減期の放射性核種の崩壊により引き起こされる害ではない。

・放射性セシウムの濃度は、妊娠中の母体でかなり高くなるが、胎盤が生理的な防御壁になって、放射性セシウムが胎児へ移行することを防ぐ。生まれたての子供の放射性核種濃度はごくわずかであるが、母乳を与えることで、放射性セシウムが子供の体内に取り込まれしだいに蓄積していく。

・神経系の先天性奇形(無脳症、脳瘤)を持つ胎児で放射性核種の分析をしたところ、他の胎児と比べてセシウム137の胎盤濃度が際立って高かった。

・体内セシウム濃度との相関は、白内障羅患率、心電図異常、代謝不調、などに見られる。

以下は私なりの考察です。

セシウムは科学的にはナトリウムやカリウムと同族元素で、同じような挙動をします。放射性カリウムは人間の体内に64ベクレル/kgほど存在しています。64ベクレル/kgの放射性カリウムというのは体重60kgの人では3840ベクレルの放射性カリウムです。放射性カリウム1ベクレルは1秒間に1本のベータ線と1本のガンマ線を放出します。我々の体内で毎秒約4000本もの放射性カリウム起因のベータ線やガンマ線が発生し飛び交っており(もっと正確には体内には放射性炭素も44ベクレル/kgほどもあるので、体重60kgの人には放射性炭素も2640ベクレルほどあります)、それでも癌にもならず生きながらえることができるのは生命の奇跡とさえ思えます(しかし実際にはこうした天然の放射能が原因で癌になっている人もいると思います、そのように考えるのが合理的です)。

放射性セシウムからの放射線も放射性カリウムからの放射線も生体の細胞側から見れば区別がつかないはずです。さらには放射性セシウムが多少体内に入っても、内部被ばく線量としては、それほどのものではないはずです。ただヒ素やカドミニウムや鉛といった重金属が生体に悪影響を及ぼすように、セシウムという金属が生体に悪影響を及ぼすのなら、話はわかりますが、極微量のセシウムが悪影響を及ぼすのか、そのあたりは私にはわかりません。人間の体内には数ミリグラムのセシウムが常時存在しています。数~数十ベクレルの放射性セシウムの重量はナノグラム(10のマイナス9乗)のオーダーなので、生化学的毒性の観点からはたいしたことはないのでは、とも思います。

ただ上記のバンダジェフフキー氏のレポートによれば、線量が少なくても、放射性セシウムの臓器への親和性は考慮されるべきで、放射性セシウムはまず心筋に取り込まれ、重大な代謝変化を引き起こす、とのことです。

また妊婦の胎盤に放射性セシウムが蓄積されるなら、胎児は胎児を保護するはずの胎盤から放射性セシウムの放射線を常時浴び続けることになります。

このようなレポートがある以上、真実が明らかになるまでは、我々は放射性セシウムの体内取り込みにかなり気を付けなければならないのでしょう。

 

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