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20ミリシーベルト、100ミリシーベルトを改めて考える

人類が放射線の存在を知ったのは、たかだか120年前であり、その生物影響がわかってきたのは、ここ数十年のことである。歴史的には産業革命以来、鉱山で働く鉱夫の間に「山の病気」での死亡があり、「山の病気」は肺の病であり、肺の病はガンであり、20世紀後半になって、そのガンの原因は鉱山の中の空気中ラドンとその放射性の娘核種を呼吸により吸い込むことからの呼吸器官の放射線内部被ばくがその原因であることが、はじめてわかったという経緯があります。

また放射性のラジウムを蛍光塗料として筆で塗るときに、口先で筆先を整えるため、その作業をしていた女工さんたちに骨肉種が多発した、ということもありました。

放射線の生物影響については、広島や長崎の原爆による悲惨な結果から、米国が集めた人体影響データによって、そのパラダイム(理論的枠組み)ができあがった経緯があります。こちらは外部被ばくについてです。現在の放射線による生物影響評価システムはこの広島・長崎の被ばくデータが基になってできあがっています。

曰く、生物影響には、しきい値のある確定的影響としきい値のない確率的影響があります。しきい値のない確率的影響は主に発がんと白血病の発生です。しきい値のある確定的影響は、急性障害であって、通常は100ミリシーベルト以下では起こらない、というのが学会などでの通説です。また総被ばく線量の算出に当たっては、内部被ばくについては「組織荷重係数」を用いて全身被ばくに換算し、外部被ばくに加算するという手法が一般的に用いられています。

ところで、100ミリシーベルト以下の被ばくであっても、確定的影響は発生しており、低線量の被ばくであっても、免疫系や循環器系の異常をきたし有病率を高め健康障害をもたらすことが、原爆被ばく者や、原子力発電所下請け労働者、チェルノブリ事故で被ばくした住民の実態調査などにより明らかになってきています。この場合の100ミリシーベルトとは生涯に自然放射線から受ける被ばく以外の被ばくであり、積算被ばく線量であることに注意が必要です。子供は放射線に敏感で、確率的影響としてのガン発生は、平均して大人の3倍以上ということも要注意事項です。積算被ばく線量として考える場合、女性や胎児や子供の放射線被ばくはかなり低く抑える必要がある、といえます。人間は宇宙線などの自然放射線に被ばくし、また食物経由で体内にかなりの量の放射性カリウムや放射性炭素があり、それらからの放射線被ばくを常時受け続けているのですが、これらは人間を含む生物が進化する過程で、放射線により壊された細胞を修復する仕組みなどが出来上がってきています。しかしながら、さらなる余分な放射線に対して、どれだけの余裕度があるかわかりませんが、あまり余裕度はない、というのが本当のところなのでしょう。

いずれにしろ余分な放射線被ばくは避けるに越したことはない、というのが正しいことなのでしょう。

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