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2012年9月

福島原発事故から放出された放射性セシウムの環境中挙動―放射性廃棄物としての処理・処分の観点から―

 

福島原発事故の炉心溶融により揮発した放射性セシウムは、放出直後の化学形はヨウ化セシウム(CsI)や水酸化セシウム(CsOH)といった無機形であったと思われます。大気中を拡散していく過程で、大気中に遍く存在している硫酸塩エアロゾルに付着、取り込まれ、輸送されたと考えられます。↓

http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120731/nr20120731.html

放射性セシウムを含む硫酸塩エアロゾルは、乾性沈着(雨なしで地表に沈着)、または雨や雪により地表に沈着(湿性沈着、これをウオッシュアウトと言います)、また放射性セシウムを含む硫酸塩エアロゾルを核として雲や霧が形成された状態では、降水が生ずると大量に地表に落下(レインアウト;これも湿性沈着)します。

 

地表に落下した放射性セシウム化合物は、地表が水を含んだ落葉や植物等の有機物であれば、セシウムイオンの形で存在し、移動しやすいと考えられます。放射性セシウムを付着した落葉や植物等の有機物を集めて乾燥し燃焼すると、放射性セシウムは比較的低い温度(450℃くらい)から揮発します。

一方で土壌に吸着した放射性セシウムは、土壌中の粘土鉱物などに強固に吸着するので、廃棄物として燃焼処理しても、燃焼温度によりますが、それほど多くはガス化せず、焼却灰の中に残ると考えられます。実際の廃棄物はいろいろな物質の混合物なのでしょうから、揮発する成分、焼却灰の中に残る成分がそれぞれ存在するのでしょう。

 

森林などにおいて植物や落葉の上に沈着した放射性セシウムは、降雨などにより、容易に水に溶けて移動し、小川や河川、湖沼に流れ込むと考えられます。一方で土壌に結合した放射性セシウムであっても、土壌の微粒子として、こうした水系にいわゆる懸濁態として、流入すると考えられます。

河川に流入した放射性セシウムは、最終的には海洋に到達するのですが、塩分濃度の高い海水と接すると、その一部はコロイド化して凝集し、海底に沈積すると考えられます。

 

焼却灰について環境省が、放射性セシウムがどれだけ出てくるかの試験をしています。↓

http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/10-mat_3.pdf

この資料のタイトルは「放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分」というもので、なかなか良くまとまっていると思います。放射性セシウムの溶出特性、土壌等への吸着特性、焼却処理過程における挙動と制御、埋め立て処分過程における挙動と制御について実験と考察が行われており、一読に値します。

 

上記資料によれば、焼却主灰と焼却飛灰(いわゆるフライアッシュ)を較べた場合、焼却飛灰のほうがはるかに放射性セシウムが溶けだす量が多く要注意です。これは焼却飛灰とは焼却により一度放射性セシウムがガス化し、その一部が煙道等で温度が下がることにより再び灰になった(灰に吸着した)成分であるためで、もともと水に溶けやすい性質であると考えられます。一般廃棄物焼却飛灰はセメントによる固化処理等の有無によらず溶出率は64-89%という結果(上記資料 P20)です。そのため一般廃棄物焼却飛灰は放射性セシウムの含有量が高い場合は、埋め立て処分せず、厳重に保管すべきと思われます。埋設が必要な場合は、埋設処分場の構造について、注意が必要です。すなわち、埋設部の上部には遮水層を設置し、埋設部の下層にはセシウムを吸着する透水層をかならず設置する必要があります。

 

また浸出液等に陽イオンとして溶存する放射性セシウムは、通常の水処理方法、すなわち凝集沈殿や砂ろ過、生物処理、活性炭吸着処理、キレート樹脂処理等の現行の浸出水処理工程では、ほとんど除去されないので、こちらも要注意です。

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福島原発事故調査委員会報告書について

4つの事故調査委員会の報告書が出揃っている。

 

民間事故調報告書は本となって出版されている。↓

「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」福島原発事故独立検証委員会著

ディスカバー・トゥエンティワン発行 20123月刊 1500

 

政府事故調故調報告書

中間報告書

http://icanps.go.jp/post-1.html

 最終報告書

http://icanps.go.jp/post-2.html

 

国会事故調故調報告書

http://naiic.go.jp

 

東電事故調故調報告書

 中間報告書及び最終報告書

 http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/interim/index-j.html

 

最近では729日の日経新聞「検証 原発事故調報告書」が良い記事であった。この記事では、政府、国会、民間、東電による4つの事故調査報告書について、東電報告書を除く3つの報告書のそれぞれについての概要と提言を記載している。また4つの原発事故調報告書について、「事故の原因」、「現場の初動」、「東電の体質」、「安全規制機関」、「官邸の混乱」、「避難の指示」、「SPEEDI(スピーディー)」につき、テーマごとに比較検討している。

 

それぞれのテーマに下記のような副題がついている。

各報告書の提言として

「政府事故調」安全基準を最新・最善に

「国会事故調」規制組織は政治から独立

「民間事故調」危機管理、国民にも責任(国民も社会と政治に参画、危機管理に責任を)

 

またテーマ毎にも下記のような副題がついており、報告書間の特徴がでている。

「事故の原因」地震・津波 見解分かれる

「現場の初動」判断ミスとの指摘も

「東電の体質」責任逃れは厳しく追及

「安全規制機関」機能不全は能力不足

「官邸の混乱」現場への介入は「悪影響」

「避難の指示」不適切と政府を批判

SPEEDI(スピーディー)」避難に活用 評価二分

 

 

国立国会図書館経済産業調査室・課がまとめた次の報告書は良くまとまっている。

ご参考まで

「福島第一原発事故と4つの事故調査委員会」

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3526040_po_0756.pdf?contentNo=1

目次は以下の通り。

はじめに

4 つの事故調査委員会

1 事故調査の意義

2 各事故調査の概要

Ⅱ 事故調査内容の比較

1 事故の直接的原因

2 事故前の対策

3 事故時の対応

4 提言と課題

おわりに

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