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東京新聞刊「日米同盟と原発 隠された核の戦後史」

ブログ記事の更新が滞ってしまいました。今後は原子力関連の書評についても記載しようと思います。

 

「日米同盟と原発 隠された核の戦後史」

中日新聞社会部(寺本政司他)編、201311月 東京新聞刊 1600

 

これはなかなか良い本です。おすすめ本です。日本の原発が、日米同盟と強く関係していることが良くわかります。

1部「日米同盟と原発」では年代順に記述されている。第1章は「幻の原爆製造1940-45」というタイトルで、戦時下の日本で進められていた原爆開発計画「ニ号計画」について記載されている。第2章「封印された核の恐怖1945-52」では広島・長崎での大量被ばくの実態が秘密にされた経緯を述べている。第3章「被ばくの記憶 原子力の夢1952-54」では日本がどのようにして原子力再開への第1歩を踏み出したか、第4章「ビキニの灰1954-55」では第5福竜丸が米国水爆実験により被ばくした経緯と、日米両政府の対応について、第5章「毒を持って毒を制す1955-57」ではビキニ事件の反核世論が一転、原発へ傾いた背景について、第6章「アカシアの雨 核の傘 1957-72」では日本が米国の「核の傘」に入った経緯と、原発と核兵器が政権の裏側で結びついた経緯を、第7章「油の一滴は血の一滴 1972-76」では、田中角栄首相の下で進められた列島改造と電源3法交付金制度の創設などについて、第8章「勝者の驕り 1977-82」では我が国の「原発ナショナリズム」について、第9章「漂流する核のゴミ 1982-89」では日米同盟の下での日本の原発推進路線の継続について、第10章「証言者たち 戦前~冷戦期」では戦時下の日本の状況や、日本の原発が日米関係と密接に結び付きながら肥大化した事実を、関係者の証言で浮かび上がらせている。

2部「福島第一原発事故の衝撃」では「カーター米国元大統領へのインタビュー」、「フクシマの1週間―米NRC会議録から」、「浜岡停止10日間の攻防」、「関連年表」から構成されている。

 

米国が核実験に対する世論の鎮静化を図るためと、世界のウランやプルトニウムの情報管理を米国下に置くため、及び旧ソ連に対する軍事上の理由のため、アイゼンハワー大統領が国連総会で、平和利用を目的に国際社会へ米国の核技術を提供する「アトムズ フォー ピース」(平和のための原子力)演説を行ったが、当時、太平洋で行われた米国の水爆実験による第五福竜丸事件を契機に高まっていた反核運動を封じ込める対日戦略にも利用していた、との記述がある。米国AEC委員長のトーマス・マレーは製鋼労働者組合で「日本に原発を建設することは、悲惨な記憶を一掃させることになる」とあいさつしたという。ちなみに米国は第五福竜丸事件の久保山さんの死亡については、自らの責任を現在に至るも認めていない。

我が国でもほぼ時を同じくして、27500万円(当時、現在の金額で30億円相当)の原子力予算(原子炉製造やウラン探査など)が国会で可決、政治主導で進められる原子力に、日本学術会議も対応せざるを得なくなり「自主・民主・公開」を原則に原子力開発を認めた。

当時の資料によると、左翼の学者をはじめ一般の人々も、「平和的な原子力の研究は日本人が最もこれを行う権利を持っている(武谷三男)」という意見が多かったようだ。

1960年の日米安保条約の改定で、日本は米国の「核の傘」に入った。この時に、数名の日本人政治家に米国から資金援助があったと、米国の外交文書に記述されているという。当時の岸首相は退陣したが、原発には触れずじまいだった。中国が核実験に成功すると、岸首相の弟であるノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作首相のもとで原発技術を利用した「潜在的な核保有」が検討されて、現在に至っている、という認識である。「能力がありながらやらないだけ、という非核政策をとりながら核兵器に転用可能な技術を温存し原子力の平和利用に大いに力を注ぐと共に、他方では日本の人工衛星を打ち上げる技術、宇宙開発を推進する(ロケット技術が発達すれば軍事利用に転用できる)」という政策である。岸首相が、安部晋三現首相の祖父というのも、我が国の原子力を巡る堅固な体制を暗示しているのかも知れない。

本書の中ではカーター米国元大統領へのインタビューも掲載されている。カーターは大統領就任演説で「地上から核兵器を全廃するという目標に向かって一歩を踏み出す」と述べ核不拡散政策をとった。「核の傘」を広げてきた米国が原子力政策を180度転換した。そのきっかけとなったのは、インドが原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを用いて核実験を行ったことである、と述べられている。カーター米国元大統領は、使用済みの核燃料再処理や、高速増殖炉開発などの核燃料サイクル路線からの撤退も決断した。

 

本書ではまた米国NRC(原子力規制委員会)の福島事故直後の1週間の会議録や、「浜岡原発停止10日間の攻防」も掲載されており、一読に値する。

 

それにしても原子力には秘密が多い。「秘密保護法」により、国民の知る権利が大幅に制限されるのではという危惧を持ちます。

 

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